Seika's Blog

声楽家 川口聖加による音楽のこと、日常のこと

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Elly Ameling

ameling-elly.jpg昨日2月8日は、名ソプラノであるアーメリングの74歳の誕生日だったとのこと。それにしても74歳とは!今でも60歳代くらいにしか見えず、元気で各地でご活躍のことと思います。お誕生日おめでとうございます。

歌曲ならば、ドイツ、フランス、イギリス(ハイドンの歌曲など)と幅広いジャンルで世界的に知られたソプラノ歌手のアーメリングは、この手のメジャーな歌手の中では、ほぼ100%歌曲分野でのみで活躍した(できた)唯一の歌手です。オペラは、ごく若い頃にいくつか出演したようですが、本格的デビューしてからは<イドメネオ>のイリア役を演じたのみ。かのフィッシャー・ディースカウでさえ、というよりどのリート歌手もオペラは必ずやっているものですが、それをせずに最後まで通せたのは、それだけで希少です。

アーメリングはたまたまオランダ出身で、私も少なからずご縁がありました。初めての出会いは99年のフィレンツェでの1週間のマスタークラス。当時からオランダ留学を考えていたので、知人に連絡を取ってもらい、マスタークラス前は直接メールで何度もやりとりをしました。今思うと、彼女の英語はとても知的で高貴な言い回しをしていたんですが、そのときは、私の英語レベルもヒドイものでしたし、とにかく大音楽家と直々にやりとりをしていることだけで浮かれて何も気づきませんでした。すでに96年に惜しまれつつ引退しているのですが、99年の彼女はまだまだ現役で歌える、素晴らしい歌声、美しい言葉の発音に、ただただ聴き惚れていました。

2度目は3年前にハーグの学校で彼女のマスタークラスが開かれ、そこで再会しました。そのときはテレビカメラも入っていました。99年の時の印象とほとんど変わらず。小柄ですが、シャキッとしていて、すごくスマートで抜け目ない。とにかく、スキがないんです。引退して、後進の指導中心に活動していても、自分に対してすごくストイック。母国語のオランダ語以外に、私の知る限り英、仏、独の3カ国語は完璧に近く話すことができ、イタリア語は苦手と言いつつある程度は話せるし、知らない単語があればその場で覚えようとしているのです。一度覚えたことを忘れようものなら自分に「だめね!」と言いながら必死で思い出します。このスーパーおばあちゃん(といっては失礼?)のパワーには圧倒されまくりでした。

彼女が発声のことを教えるのを見たことはありません。最低限の発声は習得し、ある程度きちんと解釈をつめて歌える歌手にしか教えないのだと思います。アーメリングの声は特別で、どこにも引っかかりがなく、一瞬でどこまでも届く感じ。お手本に少し歌うだけですが、彼女だけお風呂場にいるのかと錯覚を起こさせるほど、その空間全体に鳴るのです。歌えば、明瞭な発音で、繊細なピアニッシモから、響き渡るフォルテまで自由自在。あの発声は、習うというより、彼女の秀でた感覚で自然に習得したかのよう。例えるなら、習うよりは耳や感覚だけで、極上のペダルさばきをしているピアニストみたい。

アーメリングでもう一つ、思い出すのは、口笛が半端じゃないくらい上手かったこと!口笛が上手かったら、絶対上手な歌が歌える気がします。それから、彼女が一緒に仕事をした歴史的な名歌手たちのエピソードも話してくれました。ディースカウ、ヴンダーリヒ、シュライアー...。マスタークラスに参加した若い歌手たちはみな、目を輝かせてそれらのエピソードを聞きました。

自分がだらけそうになるとき、彼女のすさまじい(でも彼女にとっては当たり前の)プロ意識を思い出すようにしています。彼女のレベルには、とても追いつくことはできないけど、私にとっても偉大で光り輝く存在。いつまでもお元気で!
  1. 2007/02/09(金) 23:46:36|
  2. Musician(音楽人)
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